含歯性嚢胞(がんしせいのうほう)とは、 顎の骨の中に埋まって 生えてこないままでいる歯の一部を取り囲むように 生じる嚢胞(液体を貯めたふくろ)のことです(図1)。 図1 埋まっている歯と嚢胞 この嚢胞は徐々に拡大し、 周りの他の歯を支える骨も溶かしてしまいます。 そのため、患部の歯肉は水膨れのように大きく膨らみ(写真1)、 ペコペコした感触を持つようになります。 患部の周辺の歯はその向きが変わってしまったり (写真2、レントゲン写真)、 グラグラと動揺するようになります。 写真1、2 液体が溜まっている部位 下記のレントゲン写真では、 1本の歯(黄矢印)が萌出せずに埋まっていることが分かります。 埋まっている歯の根元の歯槽骨は溶けており(黄色〇)、 周囲の歯(赤矢印)の向きが変わっています。 レントゲン写真 埋まっている歯(黄矢印)と溶けた歯槽骨(黄色〇)と 向きが変わった歯(赤矢印) ペコペコした感触の膨らみ、 膨らみの中の液体が血の様な色であること(写真3)、 液体を抜くことでその部位は凹む(写真4)、 このような所見と上記のレントゲン写真のような 顎の骨の透過像(骨がなくなる)と埋もれている 歯の位置関係から含歯性嚢胞と診断することができます。 写真3、4 貯留液の抜去 治療は嚢胞と埋まっている歯の外科的な除去となります。 歯肉と嚢胞を切開すると 埋まっていた歯が確認されました(写真5)。 嚢胞の完全な除去と埋まっていた歯(第三切歯)、 周りの骨が溶けていた第一・二切歯、犬歯、第一前臼歯の 抜歯を行いました(写真6、7)。 写真5 埋まっていた歯 写真6 抜歯と嚢胞除去後の外観 写真7 埋まっていた歯 そして、頬の裏の粘膜を寄せて糸で縫い合わせ、 骨が溶けて空洞になった部分を閉鎖して終了となります (写真8、9)。
写真8、9 縫合後の外観
口の中を見て歯が生えていない部分がある場合、 骨に歯が埋まって見えていないだけかもしれません (これを埋伏歯といいます)。 埋伏歯を長期間放置すると、 このように嚢胞を形成し、骨を溶かし、 歯の機能を損なうことにつながります。 埋伏歯を肉眼で判断することは困難で、 歯科用レントゲン検査が必須となります。 埋伏歯が疑われる場合はそのままにせず、 受診することをお勧めします。