3日前から食欲がないとのことで来院された、 2歳のねこちゃんです。 皮膚の状態からかなりの脱水が見られ、 お腹を触ると腸の中に固いものがあることが分かりました。 血液検査からも脱水の所見が得られました。 エコー検査では 小腸の中に異物と思われるものが見つかりました。胃は消化液が溜まって膨らんでおり、 腸間膜リンパ節が腫れ腹膜炎を起こしていました。
異物による腸閉塞が疑われたため、開腹手術を行いました。 お腹の中を開けて観察すると、 小腸の中に異物が見つかりました。 異物によって腸が詰まっており、 閉塞部位の口側の腸の中には 液体が流れることが出来ずに溜まっていました。
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腸を切開するとロープの端のようなものが出てきました。
切開した部位を縫合し、 触診で胃や腸の他の部位に異物がないことを確認した後、 お腹を閉じて手術を終了しました。
このねこちゃんは術後みるみる回復し、 現在は元気に過ごしています。 異物が詰まった状態が長く続くと、 閉塞部位の腸の血流が遮断され、 徐々に腸が壊死していきます。 このねこちゃんは 腸を切開して異物を摘出するだけで済みましたが、 より長い時間経過して閉塞部位の腸に壊死がみられた場合、 壊死部分の腸を切除し、 壊死していない腸をつなぎ合わせる 難易度の高い手術が必要となります。 そのため、手術時間は長くなり、そのリスクは大きくなります。 異物(食べ物以外のもの)を口にしてしまう習慣がある動物は、 手術を受けたからといって口にすることをやめることはなく、 生涯に渡って異物を口にする習慣が持続することが予想されます。 そのため、動物が飲み込むと問題となりそうなもの (ひも状のもの、固いもの、毒性があるものなど)を 動物が届く範囲に置かないようにすることが大切です。
【症例紹介-腸内異物】
2021年4月3日