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【猫の慢性腎臓病とは・・・】

2021年5月1日

[概要]

猫の慢性腎臓病は、
3か月以上の長期間にわたり、
腎機能が進行性に低下していく病気です。
高齢の猫によくみられ、10歳以上の猫の約30~40%がかかり、
5歳以上の猫の死因第1位との報告があります。
食欲不振や体重減少などの症状が現れるころには、
腎組織の約70%が障害されています。


腎臓の役割は
① 血液中の老廃物をろ過する。
② ろ過された老廃物などを濃縮し、尿として排出する。








[症状]

・水を飲む量が増えた
・尿の量が増えた(トイレの回数が多い)
・痩せてきた
・毛艶が悪くなってきた
・吐く頻度が増えた
・便秘
・なんとなく元気がない  など。



◎若いころより飲水量、尿量が増えてきたという猫ちゃんは、
 腎臓病の疑いがあります。

腎機能が低下(濃縮能の低下)により、
多量の薄い尿が排出され、
それを補うために水を飲んでいるのかもしれません。

その場合、
たとえ頻繁に水を飲んでいるとしても
飲める量には限界があるため、
十分な水分量を飲めておらず、
脱水状態に陥っていることもあります。





[原因]

猫の慢性腎臓病の主な原因は尿細管間質性腎炎ですが、
他にも・・・
・腫瘍
・腎嚢胞
・尿路結石
・尿路感染
・高血圧
・糸球体腎炎  などが原因の場合があります。

また、蛋白尿や高リン血症、尿路感染、
高血圧は慢性腎臓病の悪化因子にもなるため、
併発すると腎機能の低下が加速していきます。



◎悪化因子を見逃すと腎臓病は進行していきます。

そのため、1か月~数ヶ月毎の定期的な血液検査によって
急激な腎機能の低下がないかを確認する必要があります。
そして腎機能の低下が認められた場合は
下記の検査を行い、悪化因子を洗い出す必要があります。





[検査]

・身体検査:
 皮膚をつまんで離した後の元に戻る速さや、
 口の乾き具合で脱水の有無や程度を確認

・血液検査:
 脱水の程度、腎機能、ミネラルバランスの確認

・SDMA:
 血液検査の項目の一つで、
 BUNやCreより早期の糸球体ろ過量の低下も検出する

・エコー検査:
 腎臓や膀胱に腫瘍や結石などがないかの確認

・レントゲン検査:
 腎臓・尿管・膀胱内に結石がないかの確認

・尿検査:
 尿路感染、結晶(尿石のもと)、
 蛋白尿、低比重尿(濃縮能の低下)の有無を確認

・血圧測定:
 高血圧がないかを確認





[治療]

腎臓の機能は一度失われてしまうと、元に戻ることはありません。
しかしながら、
腎臓病を早期発見し、
適切な治療を行うことで
腎臓病の進行を遅らせることができます食事療法
腎臓病用の療法食は、
主にタンパク質、リン、ナトリウムの制限がされています。
それらを制限し、腎臓の負担を軽くすることで、
寿命が2倍以上伸びるという報告もあります。


投薬
腎臓の血圧を下げるお薬を内服します。
また尿路感染がある猫ちゃんだと抗生剤、
高血圧がある猫ちゃんだと降圧剤などを内服します。
尿毒症による胃腸障害がある場合は
胃薬や吐き気止めの注射を行います。


皮下点滴
十分に飲水できているにもかかわらず
脱水が見られる場合、水分を皮下点滴し、
脱水の補正を行います。
脱水は急激に腎臓病を悪化させるので、
脱水が見られる猫ちゃんに対する
定期的な皮下点滴が必要とります。

 

慢性腎臓病と診断された後、
1か月から数ヶ月毎の定期検診を行います。
そして腎機能の低下の進行が認められた場合は
慢性腎臓病に併発した悪化因子が存在するため、
それに対して適切な治療を行うことで
慢性腎臓病の進行を抑えます。
適切な対応をすることで、
猫ちゃんが元気な状態で長生きできるように
私たちがお手伝いさせていただきます。

気になることや心配なことがございましたら、
当院までお気軽にご来院下さい。